がみぶろ

#がみぶろ

@jumpei_ikegami

【保存版】 #技術書典 初出展マニュアル【表紙入稿データサンプル付き】

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gami(@jumpei_ikegami)と申します。 2018年10月8日に開催された「技術書典5」で、『完全SIer脱出マニュアル』という本を頒布しました。

jumpei-ikegami.hatenablog.com

技術書典とは、技術書オンリー同人誌即売会です。

技術書典

僕が所属するサークル「しがないラジオ」は、 技術書典へのサークル参加はおろか、同人誌を作ること自体が初めてでした。 なんとか無事に入稿も終え、当日を迎えることができました。

しかし、正直に言って、同人誌作りのノウハウはインターネット上にまだまだ足りないと思います。 特に入稿作業にまつわる細かい情報について、 印刷用語や入稿の方法など重要なことはかなり調べないと出てこない印象でした。

そこで、僕たちのような「初の同人誌作りで技術書典への初出展を目指す人」に向けて、 同人誌の入稿や当日運営に必要な「ミニマムの作業」を、実際のスケジュールも含めて全て公開します。 このブログ記事を読んで、技術書典の出展に対する不安がなくなったら、 ぜひサークル申し込みをしてみましょう。

前提

基本的には僕が体験したことしか語れないので、この記事は以下の前提のもとに書かれています。

  • 印刷所は日光企画さんを利用する
  • オフセット印刷フルカラーセット(後述)で、特別な装丁は無し
  • 以下の形式で頒布する
    • 技術書典5当日
      • 物理本(B5)
      • ダウンロードカード
    • それ以降
      • PDF版のネット販売
  • 作業環境

事情が異なる人は、 適宜読み替えてください。

技術書典5までのスケジュール

技術書典4当日から技術書典5当日までの詳細スケジュールです。 細かいです。

  • 下線がある部分は、弊サークルがやった作業
  • 全て2018年の出来事
日付 n日前 出来事
04/22 169日前 技術書典4当日!
06/20 110日前 技術書典5開催決定&サークル申込受付開始
07/19 81日前 サークル申込受付終了
08/01 68日前 当落発表
08/05 64日前 「技術書をかこう! ~はじめてのRe:VIEW~」購入
08/09 60日前 執筆環境の構築完了
08/12 57日前 表紙デザイン依頼
08/17 52日前 サークル配置決定
08/19 50日前 表紙案の完成
08/20 49日前 第1章の草稿が完成
08/24 45日前 サークルカットデザイン依頼
08/29 40日前 サークルカットデータ完成
08/30 39日前 日光企画が入稿締切日を公開
08/31 38日前 カタログ用サークルカット締切
09/04 34日前 第2章の草稿が完成
09/09 29日前 入稿プランを決定
09/10 28日前 一般参加者向けウェブサイト公開
09/16 22日前 本編全ての草稿が完成
09/17 21日前 本編の校正作業が終了 & 表紙データ仮完成
09/20 18日前 ページ数の確定 & 表紙データ完成
09/21 17日前 付録の草稿が完成
09/22 16日前 20%OFF締切 & 怒涛の入稿日!
10/01 7日前 ダウンロードカードの入稿
10/02 6日前 通常料金締切
10/03 5日前 10%UP締切
10/04 4日前 15%UP締切
10/05 3日前 20%UP締切
10/06 2日前 直前準備
10/08 0日前 技術書典5当日!

以下の作業は、もうちょっと早くやった方がよかったです。

  • 草稿の執筆(がんばるしかない)
  • サークルカットデザイン依頼(デザイナーさんすいません。。。)
  • ダウンロードカードの入稿(早ければ早いほど安心)

なお、技術書典の公式的な告知については、だいたい「技術書典公式ブログ」で公開されています。 実際の内容が見たい場合は、ぜひ技術書典公式ブログの過去記事を読んでください。

知らなかったけど実は重要だった情報

最初の時点で知っておいた方がよかった「意外な事実」について紹介します。

  • 物理本を印刷する場合、ダウンロードカードのみに比べて難易度が10倍くらいになる
    • でも、紙の本を作って売るの楽しい
  • 印刷用の本文入稿データは、ページ数を4の倍数にする必要がある
    • つまり、最後にページ数の調整が必要
  • ページ数が確定できないと、表紙データも確定できない
    • つまり、ページ数が締切ギリギリに確定すると、表紙データの修正も締切ギリギリになる
  • 初めての入稿はWebではなく店舗で直接やった方が、その場で紙や印刷方法の実物を確認できて良い

どれも物理本に関わる部分です。紙の印刷を思い通りに行うのは結構めんどくさいですが、技術書典当日に段ボールを開けるときの感動はなにものにも代え難いので、ぜひがんばってみてください。

「技術書典」初出展マニュアル

それでは、作業の詳細について弊サークルの実際の時系列で述べていきます。 たぶん長くなるので、作業フェーズに合わせて気長に読んでください。

169日前: 技術書典4当日!

技術書典4が開催されました。 僕は一般参加者として参加しました。 技術書典自体が初参加だったので、その活気に衝撃を受けました。

知り合いも何人か本を出していたので、 次回はサークル側で参加したいなあとぼんやり考えました。

110日前: 技術書典5開催決定&サークル申込受付開始

技術書典5の開催が決定され、同時にサークル申込受付が開始されました。

blog.techbookfest.org

全ての手続きは、技術書典公式サイト内で完結します。 何を書くか決まっていませんでしたが、とりあえず申し込みました。

81日前: サークル申込受付終了

開始から1ヶ月経つと、サークル申込期間が終了します。

68日前: 当落発表

出展可能サークル数に対して希望数の方が多かった場合は、抽選になります。 技術書典5では会場が広くなったこともあって、あまり落選の話は聞かなかった印象です。

64日前: 「技術書をかこう! ~はじめてのRe:VIEW~」購入

技術同人誌の書き方を全く知らなかったので、技術書典を主催するTechBoosterさんの同人誌を買いました。 この本が無ければ、僕は同人誌をここまでトラブル無く頒布できなかったでしょう。 というわけで、ぜひ入手することをおすすめします。

techbooster.booth.pm

のちに気付きましたが、この本をビルドするためのデータは全てGitHubで公開されています。 自分でビルド環境を整えたあかつきには、普通に本のコンテンツをPDF形式で読めます。

github.com

ただし、お布施の意味でBOOTHで購入するのも良いと思います。

60日前: 執筆環境の構築完了

入稿用PDFのビルド環境を整備

最低限の執筆環境を整えます。 実施した作業としては以下です。(もしかしたら不要な作業があるかもしれませんが、まあ気にしない)

$ git clone git@github.com:TechBooster/C89-FirstStepReVIEW-v2.git
$ mv C89-FirstStepReVIEW-v2/ REPO_NAME/ # REPO_NAMEは適宜変える
$ cd REPO_NAME
$ rm -rf .git/
$ git init
  • vvakame/docker-reviewでビルドできるように、プロジェクト直下に以下のRakefileを保存する
    • 別にコマンド実行できればpackage.jsonのscriptsでもなんでもいい
$ touch Rakefile
desc 'build pdf'
task :pdf do
  sh <<~"EOF"
    docker run \
    --rm \
    -v `pwd`:/work \
    vvakame/review:latest /bin/sh -c "cd /work/articles && review-pdfmaker config.yml"
  EOF
end
  • 以下を実行し、PDFがビルドできることを確認
    • うまくいくと、/articles直下にPDFが生成される
$ rake pdf
  • 以下を全て削除する
    • /articles/*.re
      • 章別のコンテンツファイル
    • /articles/images/*
      • コンテンツ内に挿入する画像
  • /articles/catalog.ymlから、削除した*.reファイルの指定を削除する
    • あとで実際のコンテンツを追加していく
  • /articles/config.ymlを書き換える
    • 書き換える箇所は、たぶん以下(内容は適宜変えてください)
bookname: escape_from_sier
booktitle: 完全SIer脱出マニュアル〜『しがないラジオ』と学ぶ、転職して楽しく働くための7つのステップ〜
aut: ["jumpei_ikegami","zuckey_17"]
edt: ["jumpei_ikegami"]
pbl: しがないラジオ プロジェクト
date: 2018-10-8
history: [["2018-10-8 技術書典5版 v1.0.0"]]
rights: (C) 2018 しがないラジオ プロジェクト
  • 気になるようであれば、不要なファイルを削除する

    • PDFの生成だけなら、以下は要らないはず
      • /Gruntfile.js
      • /articles/*.scss/articles/*.css
  • commit & push

$ git add -A
$ git commit -m 'initial commit'
$ git remote add origin git@github.com:ACCOUNT_NAME/REPO_NAME.git # ACCOUNT_NAMEとREPO_NAMEは適宜変える
$ git push -u origin master
  • CI環境とかは、まあ無くても何とかなる

執筆フロー

上記作業が完了したら、とりあえず執筆作業を始められます。

まずは、Re:VIEW記法をなんとなく覚えます。

github.com

見出し、箇条書き(ol、ul)、リンク、画像辺りを覚えれば最初は十分です。

執筆フローは、大まかに以下です。

  • 新しい章を書き始めるときには、ブランチを切って/articles/xxx.reファイルを新規作成する
  • 章のコンテンツをそのreファイルにRe:VIEW記法で記述する
  • /articles/catalog.ymlに、その章に対応するreファイル名を追加する
  • rake pdfでビルドして、出力を確かめる
  • 必要なら、PR作ってレビューを依頼する

編集作業は最後にやるので、まずはコンテンツの量を稼ぐことを考えます。

ちなみに、/articles/config.ymlでいじった記憶がある設定値は、以下の2項目です。

# 目次として抽出する見出しレベル
toclevel: 2
# 本文でセクション番号を表示する見出しレベル
secnolevel: 3

57日前: 表紙デザイン依頼

Adobe IllustratorPhotoshopが自分では使えない場合は、 表紙と裏表紙のデザインを誰かに依頼します。 僕は偶然にも婚約者さんがデザインできる人だったので助かりました。

日光企画で印刷する場合は、最終的には以下の「表紙用トンボテンプレート(B5判・PSD形式)」を使って作成することになります。

【トンボダウンロード】オフセット用

ちなみに、デザイナーさんにお願いする可能性のある制作物は、全体を通して以下です。 僕はPOPや値札だけ自分で作りました。

デザイナーさんにお願いする可能性のある制作物

  • 物理本の表紙+裏表紙データ(.psdなど)
  • PDF版の表紙/裏表紙データ(.jpgなど)
    • 物理本と違って、表紙と裏表紙を別ファイルにする
    • 背表紙は無し
  • ダウンロードカードの印刷データ(.aiなど)
  • サークルカット(.png
  • 当日設営に必要な印刷物(.pdfなど)
    • ポスター
    • POPや値札

52日前: サークル配置決定

サークルの配置が決定します。 特にこの時点で配置を意識することは無いです。

気が向いたら、Twitterの表示名に配置番号を入れましょう。 僕は技術書典期間中はgami お27『完全SIer脱出マニュアル』@技術書典5さんになりました。

50日前: 表紙案の完成

表紙案がデザイナーからいくつか上がってきたので、良さそうなやつを選んで軽く幅出ししてもらいます。

49日前: 第1章の草稿が完成

時間を見つけて、原稿も進めます。

45日前: サークルカットデザイン依頼

サークルカット」のデザインを依頼します。 サークルカットとは、技術書典のサークルリストやカタログに掲載されるサムネイル的な画像です。 普通にPNGファイルなので、自分で作ってもいいです。

f:id:jumpei_ikegami:20181007200612p:plain

docs.circle.ms

  • 画像をダウンロードして、サイズを変えずに上書きする
  • 左上の枠は配置番号、右上はサークル名を書く(たぶん)
  • Web用(カラー)、カタログ印刷用(グレースケール)の2種類用意

40日前: サークルカットデータ完成

サークルカットの画像データが完成したら、技術書典のマイページで2種類とも登録します。

ついでに、書く内容も固まった頃だと思うので、「頒布情報」も埋めておきます。 頒布情報には、同人誌に関する以下のような情報を登録します。

  • 書名
  • 概要(1,000文字まで)
  • ページ数
  • 頒布価格
  • 頒布予定数
  • 関連URL(最大4つ)
  • 頒布物について説明する画像(最大4枚)

いつでも編集できるので、未定の項目は決まり次第登録します。

39日前: 日光企画が入稿締切日を公開

これも同人誌文化らしいですが、印刷所毎に、「このイベント向けに同人誌を印刷するなら、いつまでに入稿してくださいねー」という締切が設定されます。 印刷のプランによって違いますが、通常締切はだいたいイベントの1週間前くらいです。

なお、通常締切より早く入稿すると割引になったり、遅く入稿すると割増になったりします。 早く入稿できれば部数によっては数万円単位で安くなるので、できれば早割りを狙っていきましょう。

38日前: カタログサークルカット締切

カタログ用のサークルカット(グレースケールの方)が締め切られます。 つまり、この時点のサークルカットでカタログが印刷されます。 間に合わなかった場合はデフォルト画像になるので、頑張りましょう。

なお、Web版のサークルリストはこれ以降も編集できます。

34日前: 第2章の草稿が完成

全体の1/3くらいの草稿が書き上がりました。

29日前: 入稿プランを確定

日光企画のWebサイトとにらめっこしながら、入稿プランを確定しました。 サイトには色々書いてありますが、オフセットなら「スタンダードフルカラーセットB5」というやつにすればいいです。 名前的に本文もカラーかと誤解しがちですが、表紙がフルカラーなだけで本文はグレースケールです。

プランが決定したら、目指す入稿締切日を決めます。 僕らはイベント16日前入稿の「20%OFF」を目指すことを宣言しました。

なお、日光企画さんが「にこぷり」というサービスでWeb見積もりができます。

日光企画 にこぷり.com

入稿自体は店舗で実施するのでここでの手続きは不要ですが、何となくどんな設定値があるのかを見ておくと良いでしょう。 入稿時には、ざっくりと下記項目を決めることになります。

  • オフセット/オンデマンド
  • プラン(スタンダードフルカラー)
  • 表紙の用紙、印刷方法、PP貼り(表面の加工方法みたいなやつ)
  • 本文の用紙、印刷方法
  • トジ方法、トジ方向
    • オフセットで横書きなら、普通は「平トジ/左トジ」
  • ページ数、発行部数

用紙などは店舗で実物を確かめながら選べるので、ここで決める必要は無いです。

ちなみにこの日は「本編の草稿を完成させるぞ」という意気込みで1日中カフェに籠りました。 実際の草稿完成はその7日後のことでした。 えてして、自分の作業見積もりは甘くなりがちです。

28日前: 一般参加者向けウェブサイト公開

一般参加者向けに、ウェブサイトが公開されます。

特に重要なのは、「サークルリストが一般公開される」ということです。 参加者はサークルリストを眺めて、どのサークルの本を買おうか吟味します。 つまり、この一般参加者向けウェブサイト公開までにサークルカットや頒布情報などを充実させておくことで、より広い人に興味をもってもらえるようになります。

この日までには、自サークルの情報をちゃんと技術書典のサイトに登録しましょう。

22日前: 本編全ての草稿が完成

本編の草稿が書き終わりました。 めっちゃ疲れた。

21日前: 本編の校正作業が終了

以下を無くすために、校正作業をしました。

  • 誤字・脱字
  • 表記揺れ
  • 不適切な表現やわかりにくい表現

また最初から読み直して、「全体を通じた表現や論旨の一貫性」を向上するための修正をガシガシ加えていきます。

PCで作業をしてもいいですが、なぜか人間は紙に印刷した文章の方が校正能力が上がる気がします。 アナログですが、印刷した草稿に赤ペンを入れていくのがおすすめです。

21日前: 表紙データ仮完成

表紙データが仮完成しました。 「仮」と言っているのは、ページ数が確定するまでは背表紙の幅が決まらないからです。

「表紙データ」とは、正確に言うと「表紙+背表紙+裏表紙」が合わさったPSD形式のデータです。 そして考えれば当たり前ですが、「背表紙」は本の厚さに応じてその幅が変わります。 つまり、本文のページ数が決まらない限りは、表紙データを確定させることができないのです(!)

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18日前: ページ数の確定 & 表紙データ完成

締切2日前にして、まだ付録原稿ができていませんでした。 しかし、デザイナーの作業可能時間を考えると、ページ数を確定させて表紙データをfixさせる必要がありました。 ページ数自体は後で調整が聞くので、「えいや」で表紙込み100ページに確定させました。

背表紙の幅(背幅)の計算方法は、以下です。

  • 表紙込みページ数 * 本文用紙の厚さ

「表紙込みページ数」とは、紙の枚数ではなく、言葉通り「ページ数」です。 たとえば『完全SIer脱出マニュアル』は本文のページ番号が96までありましたが、そのときの表紙込みページ数は「表紙+表紙裏+裏表紙+裏表紙裏」の4ページを足して、100ページです。

「本文用紙の厚さ」は紙の種類に依ります。こだわらなければ日光企画さんの「上質90kg」になるので、0.063mmです。 各紙の厚さは、日光企画さんのトンボテンプレートのページに記載があります。

つまり、表紙込み100ページの場合、背幅は6.3mmです。 これをデザイナーに伝えて、表紙データをfixしました。 「レイヤーの統合」や「文字のアウトライン化」を忘れずにしてもらいましょう。

実際に日光企画で入稿実績のあるPSDファイルを公開するので、参考にしてください。

「完全SIer脱出マニュアル」表紙データ

17日前: 付録の草稿が完成

入稿〆切前日に付録の草稿が完成しました。 あとは付録の校正と、全体の編集作業を完了して、入稿するだけです。

16日前: 20%OFF締切 & 怒涛の入稿日!

いよいよ、自分たちで設定した入稿締切日です。 本日の18:00までに日光企画お茶の水店に原稿を持ち込めば、20%OFFを勝ち取れます。

最後の編集作業

入稿前に、最終校正を実施します。 全体を通じた表記揺れをエディタで一括置換したりしました。

参考までに、僕が置換した表記揺れは以下でした。

最も重要な作業は、ページ数の調整です。 印刷の都合上、ページ数を4の倍数に調整する必要があります。

僕たちは本文ページ数を96ページに設定したのですが、この時点ではページ数が足りませんでした。 読みやすさの観点も踏まえて、以下の方法で水増ししました。

  • コラムの挿入
  • 改ページの挿入

コラムを挿入するには、以下を記述します。

====[column] コラムのタイトル

コラムの本文

====[/column]

改ページを挿入するには、以下を記述します。

//embed[latex]{
\clearpage
//}

PDFをビルドし、ページ数が問題なくなれば、以下を実施します。

  • フォントの埋め込み
  • PDF/X形式への変換

PDF/X形式への変換については、「技術書をかこう! ~はじめてのRe:VIEW~」に詳しく書いてあるのでそちらをご覧ください。 この本にあるように、PDF/Xの出力にはAdobe Acrobat Pro DCが必要です。 無料体験版でも特に問題ありません。

「フォントの埋め込み」についても書かれていますが、vvakame/docker-reviewがデフォルトでやってくれていました。神。

入稿

本文データ(PDF/X)と表紙データ(PSD)をUSBメモリに入れて、日光企画お茶の水店さんに行きました。

店舗に行く

日光企画お茶の水店さんは同人グッズの工房も提供していて、同人誌入稿窓口と同じ場所にあります。 わいわい同人グッズを作っている人達の横で、「同人誌の入稿に来ました」と告げましょう。

  • 予約は不要です
    • 唐突に来店しても、優しく対応してくれます
    • 営業日や営業時間は結構変則的なので、必ず公式ホームページで確認しましょう
  • 所要時間は約30分間でした
    • 僕は14:15に行って、14:40には手続きを終えて外に出ました
  • その間に同人誌入稿の手続きをしていた人は僕だけでした。割と空いてる

印刷申込書の記入

作成する同人誌について、店員さんがヒアリングしながらテキパキと「印刷申込書」を埋めてくれます。 連絡先とイベント情報だけは、店員さんがデータチェックをしている間にこちらで記入しました。

印刷申込書に記載される内容は、以下でした。

  • 全般
    • 書籍タイトル: 完全SIer脱出マニュアル
    • サイズ: B5
    • 表紙込みページ数: 100ページ
    • 印刷部数: 200冊
    • トジ方向: 左トジ
    • トジ種類: 平トジ(固定)
  • 表紙
    • 用紙: NPホワイト200kg
    • PP加工: マット加工
    • 作成環境(表紙): MacでIllustrator→PSD出力
    • 作成環境(本文): PDF/X
  • 本文
    • 用紙: 上質90kg
    • 作成環境: MacでPDF/X出力
  • 搬入
    • イベント名: 技術書典5
    • 会場名: 池袋サンシャインシティ2F展示ホールD
    • スペースNo: お27
    • サークル名: しがないラジオ
    • 全部搬入?: 200冊全部搬入
  • 連絡先
    • 氏名
    • 電話番号
    • メールアドレス
    • 住所
  • その他

だいたいは即答できましたが、 表紙データと本文データの作成環境については、訊かれると思っていなかったので曖昧になってしまいました。 特に深くは訊かれませんでしたが、念のためAdobe Photoshopバージョン番号などを控えておきましょう。

窓口には紙や印刷のサンプルが置いてあり、その場で触らせてくれました。それをふまえて用紙やPP加工について決めていきます。

PP加工というのは「ポリプロピレン加工」のことで、表紙の表面をコーティングする加工方法です。 一番安いものでいいかと思っていましたが、 マット加工の艶消し感が好みだったので、その場で心変わりしました。 マット加工への変更は+5円/冊だったので、200部でも1,000円しか変わりませんでした。

表紙データは、特に何も言われず問題なし。

本文データについては、以下を指摘されました。

  • 目次や本文のリンク部分の色が、もともと赤いのをグレースケールにしたので、色が薄い
  • 目次直後のページだけ、ノンブル(ページ番号)が無い
    • 「隠しノンブルにしておきますね」と言われた。製本すると隠れる部分にページ番号を振るという意味っぽい

通常料金は8.7万円くらいでしたが、以下の割引が効いて6.3万円くらいになりました。

2.4万円の割引は破格なので、確実に利用しましょう。

なおpixivプレミアム会員特典割引は、スマホでpixivのマイページを開いてみせればOKです。 URLパスの末尾に表示されるIDを控えられます。

最後にお金を現金で払って、印刷申込書の控えと領収証を受け取って終了です。 「お客様の名前で領収証を切って大丈夫ですか?」と言われたので、会社名で発行する人もいるのかも。 最後に飴をくれました。さすが優しいと評判の日光企画さん

なお、日光企画の技術書典5新刊では、特典でポストカード(本の発行部数と同じ枚数) or A2ポスター(1枚)が無料で印刷できたようです。 僕は当日知ったのですが、A2ポスターもお願いすればよかったと後悔しました。

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7日前: ダウンロードカードの入稿

QRコードの生成

ダウンロードカードの作成にはPDF版書籍データをダウンロードできるQRコードが必要です。 僕たちはPDFに加えてポッドキャストの限定エピソードも配布したので、そっちのQRコードも生成&印刷しました。

複数ダウンロードを防ぐならシリアルコードを生成してごにょごにょやった方がいいですが、 めんどくさいので僕はGoogle Driveにアップロードして共有URLを生成しました。

URLをQRコードに変換するWebサービスはたくさんあるので、適当にQRコード画像化します。

なお、Google Drive内のデータを後から更新する場合は、必ず「同名のファイルをアップロードし、既存ファイルを上書き」します。 既存ファイルを削除してからアップロードすると、共有URLが別のものになってしまうので、QRコードがリンク切れします。 これも本来は自分が持っているドメインDNS設定をちゃんとやった方がいいですが、まあ気にしない。

ちなみに、Google Driveは大量のリクエストが来ると一時的にダウンロード禁止になったりするので注意です。僕たちもイベント直後は一時的にダウンロード制限されたようです。

AWSをはじめよう」のmochikoさんは、BOOTHでパスワード付きzipを無料配布し、パスワードをダウンロードカードに印刷して配布しているようです。アクセスが集中するようなら、この方法が良さそう。

mochikoastech.booth.pm

ダウンロードカードの印刷依頼

ダウンロードカード用の画像データを入稿します。 基本的には事前に自宅で受け取るので、イベント当日までに宅配を受け取れないと涙目です。なるべく早めに入稿しましょう。 もっと早くてもよかった。

ダウンロードカードを印刷する印刷所はどこでもOKです。 僕はザッと調べた限り一番安そうだった東京カラー印刷さんの名刺・ショップカード印刷を利用しました。

サイトにIllustrator形式のテンプレートがあるのでそれを利用して入稿データを作成しWeb入稿します。 文字のアウトライン化を忘れて一度差し戻しになったので、注意しましょう。

名刺サイズで1,000枚両面印刷すると、2円/枚くらいで印刷してくれて、1週間くらいで宅配されます。 100枚しか刷らないと10円/枚くらいするので、できるだけたくさん刷りましょう。

紙質は値段相応といった感じでしたが、いい感じに印刷できました。

6日前: 通常料金締切

本文データの入稿締め切りです。 なお、表紙データの通常締切は1日早かったみたいなので、注意してください。

ここから、入稿が1日遅れる毎に大幅な料金アップが始まります。 ご利用は計画的に。

  • 5日前: 10%UP締切
  • 4日前: 15%UP締切
  • 3日前: 20%UP締切

2日前: 直前準備

イベント直前の休日を使って、イベント当日の準備をしました。

電子書籍版PDFの生成

ダウンロードカードやBOOTHへの登録に使う、電子書籍版のPDFを生成します。 こんなにギリギリである必要は無いですが、逆にいえば当日までは電子書籍版であれば直せます。

「技術書をかこう! ~はじめてのRe:VIEW~」に書いてある通り、電子書籍版の生成作業をします。 電子書籍版のブランチを作って作業するのが良さげ。

  • /articles/config.ymlを編集します。
# LaTeX用のスタイルファイル(styディレクトリ以下に置くこと)
# texstyle: reviewmacro
# tatsumacroは、電子書籍版の制作に利用する
texstyle: tatsumacro
# texstyle: techbooster-doujin

#
# LaTeX用のdocumentclassを指定する
# tatsumacro利用の場合はこちら
texdocumentclass: ["jsbook", "oneside,14pt,uplatex"]
# TechBoosterの指定は次の通り
# texdocumentclass: ["jsbook", "b5j,twoside,openany,uplatex"]
  • /articles/layout.tex.erbをリネームして無効化します

こうすると書籍入稿用PDFに特有の余白が減り、1ページあたりの文字数が増えます。

あとは以下の作業をします。

  • 改ページなど紙版特有の記述を削除
    • ページ数の制約は無いので、入稿用に追加した改ページなどを適宜消します
  • PDF出力したファイルをAdobe AcrobatのPDF編集モードで開き、空ページを最初と最後に足す
  • 表紙と裏表紙のpngデータを、その空ページに貼り付ける
    • config.yml内で表紙画像を指定できますが、裏表紙がtexでややこしかったので、PDFを直接編集しました。PDFは作れる!

以上で、それっぽいPDFが生成できます。

なお、「技術書をかこう! ~はじめてのRe:VIEW~」に書いてないけどハマったポイントも、いくつかありました。

  • 電子書籍版で出力すると、なぜかフォントが太くなる
    • 詳しい状況やとりあえずの解決方法は以下のtweetをご覧ください

  • config.ymlのtoclevelの指定が、入稿版と電子書籍版で1段変わる気がする
    • マジで謎
  • 電子書籍版で出力すると、B5ではなくA4になる
    • 仕様かもしれないですが、表紙データのサイズを間違えて作り直してもらった

以上です。TeXつらい。

POPやポスターの準備

当日の設営に使うPOPやポスターを用意しました。 本の内容がどんなによくてもブースの見栄えが悪いと目立たないので、「それっぽさ」を演出しましょう。

買うもの

  • カード立て ×10個
    • 紙全体を包むタイプの方が、ペラペラの紙でもそれっぽく見える

  • ポスタースタンド ×1個
    • 折りたたむとめっちゃコンパクトで素晴らしい
    • クリップタイプのPOPスタンドとセットで買った

  • テーブルクロス ×1枚
    • ブースの机サイズを要確認
    • だいたい1m * 1mあれば大丈夫

  • 集金袋 ×10個
    • お札を10万円セットにして数えるために、多めに買いました
    • 700円など端数がある場合は、コインケースも買いましょう

  • 見本誌用ブックスタンド
    • 僕は自宅で使っていたものを持っていきました

actto BST-02 ブックスタンド(OEM品番:EDH-004)

actto BST-02 ブックスタンド(OEM品番:EDH-004)

他には、アカウント情報を印刷したネームカードを入れるネックストラップなどを準備しました。別に無くてもいい。

印刷したもの

こだわらなければ、コンビニ印刷で大丈夫です。 紙を選んだり大量に印刷したりする場合は、kinko'sなどを使いましょう。

www.kinkos.co.jp

僕が刷ったのは以下です。

  • A3ポスター ×3枚
    • 前述のように、日光企画さんでA2ポスターを1枚刷ってもらってもよかった
    • 2枚は机の前に、1枚はポスタースタンドに設置
  • 値札系(カード立てに入れるやつ)
    • 物理本の値札
    • ダウンロードカードの値札
    • 「写真OK!ハッシュタグでツイートしてね」
    • 「ご自由にお持ちください」
      • 無料で配る名刺とかシールとかがある場合
  • POP系(クリップで挟むやつ)
    • 「見本誌:お気軽にお読みください」
    • ブース番号表示

コンビニ印刷のデフォルト設定だと、データ上のサイズより少し小さく印刷されるという問題がありました。 詳しくは以下の記事を参照。

yarnyarnyarn.hatenadiary.com

設営リハーサル

当日の設営で慌てなくてもいいように、余裕があれば自宅の机で設営リハーサルをしてみましょう。

ブログ&ツイートで宣伝する

自分のブログがある場合は、本の内容や執筆裏話などを記事にまとめて公開しましょう。

jumpei-ikegami.hatenablog.com

技術書典に来る一般参加者の目にとまるように、#技術書典でツイートするとよいです。

0日前: 技術書典5当日!

あとは当日を楽しむだけです!お疲れ様でした! 余裕があればTwitterで本の宣伝をしたり売れ行きを実況したりすると楽しいです。

やること概要

  • サークル入場時間中に会場入りする
    • 運営の準備が早く終わると、早く入場できることがある
  • 自分のブースを探す
  • 本が届いていること&印刷に問題ないことを確認する
  • ブースの設営をする
  • 開場後は、がんばって売る
    • 売り子は自分含めて2人以上いないとトイレも行けなくて死ぬ
  • 閉場後、ブースの撤去をする
    • 段ボールは運営さんが回収してくれた
  • 非公式打ち上げがあったりするので、気が向いたら参加する

当日の詳細は、以下のブログ記事をご覧ください。

jumpei-ikegami.hatenablog.com

反省点

今から振り返って、「こうしておけばよかった」という反省点を列挙します。

印刷について

  • 「目次直後のページにノンブルが無い問題」を解消できなかった
    • まあ隠しノンブル入れてくれたので大丈夫
  • 「PDF内のリンクが赤い問題」を解消できなかった
    • 以下のリンクに詳しい

qiita.com

イベント当日について

  • オンライン決済に対応すればよかった
    • めっちゃ簡単に対応できるもよう

blog.techbookfest.org

  • 見本誌を多めに用意すればよかった
    • 混んでくると、1冊じゃ足りなかった

まとめ

以上、技術書典にサークル参加するまでにやった作業の全貌でした。

この記事でサークル参加のハードルが下がったと思うので、気軽にサークル参加しましょう〜。

また、いろんな参考記事があった方がいいので、ぜひ本記事のような作業振り返りブログを書いてみてください。