がみぶろ

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@jumpei_ikegami

「人を知ること」が重要になったいま、なぜ「普通の個人」が輝く時代になったか? #CXDIVE

f:id:jumpei_ikegami:20180904230146p:plain gamiと申します。PLAIDという会社で、「CX(顧客体験)プラットフォーム KARTE」の開発や提供にまつわる仕事をしています。 プライベートでは、「楽しく働く人を増やす」ことを目指したポッドキャストしがないラジオ』のパーソナリティをしています。

今日は「CX DIVE」という最高なイベントに参加してきました。 cxdive.com

PLAIDが主催のイベントなので僕は完全に関係者なのですが、普通に参加者として行ってきて普通に得るものが大きかったので、個人のブログで感想を書きます。

CX DIVEは、CX(顧客体験)の今とこれからを考えるイベントで、セッション形式で12名の登壇者がテーマに沿ったトークをします。

僕はミーハー心でゆうこすさんやハヤカワ五味さんのセッションを聴いたのですが、その話の内容や2名の生き方から得られる気付きが多かったので、そこを中心に書いていきます。

女性の「モテたい」気持ちを全力で応援する24歳

ゆうこすこと菅本裕子さんは、HKT48脱退後に大きな挫折を味わい、そこからSNSをフル活用してフォロワーを増やしたクリエイター。 「モテクリエイター」を名乗り、各種SNSや動画配信サービスで女性がなりたい自分になるための情報発信をしています。

CX DIVEのセッションでは、自分のファンを分類してそれぞれに向けた発信方法を考える、新規流入向けとコアなファン向けでメディアを意図的に使い分ける、など、ファンを増やすための非常に具体的な方法論を語っていました。

twitter.com

元々は男性ファンが多いアイドルだったところから、今では圧倒的多数の女性ファンを抱え、累計フォロワー数150万人を突破したとのことで、個人とはいえ完全にマーケティングのプロという感じです。

また、「インスタ世代は『ググる』のではなく『タグる』(タグで情報を手繰り寄せる)」という話から、インスタのview数を増やすためのタグの重要性についてつなげていて、納得感がすごかったです。

僕はギリギリ20代ですでに若者文化から取り残されているので、ものすごく勉強になりました。

ゆうこすさんについては、僕も大好きなmilieuというメディアのインタビュー記事がとてもわかりやすいです。

milieu.ink

コンプレックスのある女性のためのファッションブランドを経営する23歳

ハヤカワ五味さんは、19歳で株式会社ウツワを設立した経営者。

胸が小さいことを「貧乳」と呼ぶのは間違っているという思いから「シンデレラバスト」というポジティブな呼び方を提唱し、シンデレラバスト専門の下着ブランドを運営しています。

ハヤカワさん自身もコンプレックスを抱いていたことから、同じような悩みを抱えた女性に届けたいプロダクトを作って販売しています。

CX DIVEのセッションでは、地域や世代で異なる「色眼鏡」をテーマに、マーケティングの文脈でも「事実より、知覚されたものが重要」であることを、具体的な事例を交えて話していました。

例えば、日本人の多くは「欧米人への憧れ」を抱いておりアパレル系のメディアに欧米人モデルが多いですが、中国では全くそんな「色眼鏡」は無いので日本と同じ感覚だと爆沈する、という話をされてました。 そこまで違うのか、という例が多く、学びが大きいです。

特に面白かったのは、「好景気眼鏡」として紹介していたバイアスでした。 好景気の時代を生きてきたおじさん達は無邪気に「最近の若者は欲がなくて、車も買わない」とか言いますが、普通に収入は減って支出は増えてるので、よっぽど好きじゃ無いと買わねえよ(意訳)、とバッサリ切り捨てていました。

ついつい、日本や自分が「普通」だという前提でモノを売ろうとしてしまうけれども、同じものを見ても意外とみんな全然違う感じ方をするんですよ、という話でした。

「バイアスなんて無い」という認知そのものがそもそもバイアスである、というメタ的な構造もまた面白かったです。

ハヤカワ五味さんについては、少し古いですが以下のインタビュー記事がよくまとまっていました。

news.yahoo.co.jp

なぜ中年たちはこぞって彼女達の講演を聞きに来るのか?

とても優秀だとはいえ、ゆうこすさんは24歳、ハヤカワ五味さんは23歳です。 でもそんな2人のセッションは、狭い会場なら立ち見が出るほどの大盛況でした。 40代と思われる「おじさん」とかも、真面目な顔でメモを取りながら、彼女らの話を聞いていました。

きっと10年以上前であれば、こうしたカンファレンスで呼ばれる登壇者は大企業でたくさんの経験を積んだ中堅以上の社員だったでしょう。 それが、個人としての活動の延長線上で活躍している若いクリエイターの話をこぞって聴くようになったのです。 これは、何かのゲームのルールが変わったとしか思えません。

僕は、「人を知ること」の重要性が増したことがそのゲームチェンジの大きな原因かもしれないなあと、漠然とセッションを聞いていて思いました。 ハヤカワ五味さんの話にあるように、地域や世代などの環境によって、「色眼鏡」は大きく異なります。 今では、こうした「人の違い」に寄り添ったニッチなプロダクトの提供も、事業として可能になってきました。 逆に言えば、「人の違い」を無視した画一的なプロダクトは、どんどん売れなくなっています。 こうしたルールの中では、サービスやプロダクトを届けたい相手を深く知ることが、とても重要になります。

特に情報が爆発的に増えたここ10年の環境変化は目まぐるしく、ギリギリ20代の僕でも、5歳年下の若者たちのモノの見方や商品の買い方については全くわかりません。 また、インターネットによって多様な価値観が許容され、クラスタ毎に情報の受信や発信ができるようになりました。 インターネット上に露出した多様な人間像の全てを正しく理解することは不可能であり、その翻訳者としての「個人」が求められているのではないでしょうか?

ゆうこすさんや、ハヤカワ五味さんは、「若者」、「モテたい女性」、「身体にコンプレックスのある女性」などのクラスタの声を翻訳する代弁者として、圧倒的な価値があるように見えます。 若者の「眼鏡」を「おじさん」がダイレクトかつ身体的に理解することは、到底不可能だからです。

「普通の個人」としての輝き方

ゆうこすさんや、ハヤカワ五味さんのような、昔の価値観で評価すれば「普通の個人」であったような人が、ビジネス的な場所でも輝ける時代になっています。 それは、個人として輝きたい人にとっては素晴らしい時代であり、試される時代でもあります。

お2人の活動から、個人としての輝き方のヒントを得るならどこでしょうか?

「人を知ること」の重要性に照らして考えると、「自分はどんな人の『眼鏡』を知っているか」ということを問い直すことから始めればいいと思います。

例えば、何者でもない僕の例で考えましょう。

僕が持っている属性は、大小散りばめると、例えば以下のような感じです。

ここから、レアリティの高さとニッチさのバランスを考えて、「どんな人の『眼鏡』を知っている」と見せていくかを決めていくのが良さそうです。 例えば、「男性」というのは広すぎますが、「元『東大卒フリーター』」というのは狭すぎる気がします。

「レガシーなSIerからベンチャーに転職」という要素から、「SIerからベンチャーにエンジニアとして転職する人」の気持ちはわかるかもしれません。 実はそんな人向けにすでにポッドキャストで情報発信をしています。

他には、「マーケティング界隈で働くエンジニア」という要素を活かして、「プログラミングを学びたいマーケター向け」に上手く情報発信ができるかもしれません。

こんな風に、「自分はどんな人の『眼鏡』を知っているか」という軸で自分が持っているカードを整理することで、個人として輝くための方向性が見えてくる気がしました。

「ボーダーレス」と「コミュニティ」

今回のCX DIVEのキーワードに、「ボーダーレス」という言葉がありました。 この言葉は、最初のKey Sessionでも最後のClosing Sessionでも、示し合わせたように登場しています。 この「ボーダーレス」と絡めてこれまでの話を解釈してみるのも面白そうです。

ゆうこすさんもハヤカワ五味さんも、自分が欲しい情報やプロダクトを発信しているように見えます。 そこには「企業と消費者」のような境界はありません。 また、例えばゆうこすさんのインスタグラム投稿にはフォロワーからのコメントが100以上付き、そのコメントも含めて全てがコンテンツとして機能しています。 そこに「発信者と受信者」のような明確な境界はなく、誰もが発信者であり受信者であるような世界で、個人として自分のフォロワーたちの間に溶け込んでいます。

「企業と消費者」というレガシーな境界が溶けていった先にある「消費活動」は、もはや「コミュニティ」的な様相を呈してきます。 ライブ配信中に商品を販売するライブコマースなどは、その象徴的な例にです。

一歩踏み出した個人が、特定クラスタの内側から発信をし、その発信を核にコミュニティが形成されていく。 ある個人は複数のコミュニティに緩やかに所属し、そのコミュニティの中で情報の受発信や商品の売買を行う。 もしも、そんなコミュニティベースの有機的な経済活動が全ての世代で当たり前に行われる時代が来たら、ビジネスも今までとは全く違うルールで動くことになり、かなり面白い世界なんじゃないでしょうか?

そんな世界の「CX」とは何なのかを考えていくのは、面白そうじゃないですか?