がみぶろ

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@jumpei_ikegami

創業から4年の「メイカー」が中国スマホ市場トップシェアになる、「メイカーズ」の驚異のスピード感の源泉とは?

しがないラジオパーソナリティのgamiです.

今度、中国の深圳に旅行に行くことになったので、『メイカーズのエコシステム 新しいモノづくりがとまらない。』という書籍を読みました.

私はWeb系エンジニアの端くれで、ハードウェア産業で世界的に今なにが起こっているのかは、今まであまり知りませんでした. この本を読んで、かつてソフトウェアで起こったようなイノベーションやオープン化が、ハードウェア分野でもものすごいスピードで発生しているということが、様々な事例とともに理解できました.

もっとも大事なことは、そのイノベーションというのは、学会や論文と仲がいいようなものばかりではなく、「同人的」なお遊びのエコシステムから生まれてきたということです.

『メイカーズのエコシステム』

この本は、「メイカー」と呼ばれる同人的なハードウェア製作者が、なぜ世界規模で増えていて、なぜその中でXiaomiやGoProなどの世界的メーカーが登場したのかを説明する本です.

著者は高須正和さんで、ニコニコ技術部深圳観察会を主催したり、日本と世界のメイカームーブメントをつなげる活動をされている方です.

学術的な本というより、メイカーズの熱狂の現場を見てきた著者やメイカーたちの言葉を集めた、実際的な本でした.

何が書いてあったか?

3行でいうと

  • 「メイカーコミュニティ」、「ハードウェアのオープンソース文化」、「小ロット製造に対応した工場」、「クラウドファンディング」、「アクセラレータ」などの登場によって、同人的なメイカーが世界的メーカーになるためのパスができた
  • 深圳のハードウェア製造エコシステムは驚異的に発展しており、複雑な部品も安価に小ロットから製造できる
  • オバマ政権、深圳政府、シンガポールなど、STEM教育の導入や金銭的補助によって、政府主導でメイカーのエコシステムを構築しようとしているケースが増えてきた

メイカームーブメントとは何か

ソフトウェア産業については、初期投資が少ないこともあって、近年スタートアップが大企業のビジネスを脅かす例が多くあります. 一方、ハードウェア分野では、まだ大企業の方が強い時代が続いていました.

しかしここ最近、アメリカや中国を中心に、創業してから短期間で、歴史あるメーカーと並ぶシェアを獲得するスタートアップが登場するようになりました.

この本では、以下のような企業が例に挙げられています.

  • GoPro
  • Xiaomi
  • DJI

実際、私もXiaomiが買収したHuamiというメーカーが作っている"Xiaomi Huami AMAZFIT Bip"というスマートウォッチを夢の中で使っています. 一度の充電で45日間使えるなど、これまでのスマートウォッチの常識を覆す性能をもっていて、品質もよく、動作も安定しています.

調べてみると、Xiaomiは創業から4年で、中国スマホ市場トップシェアを獲得したらしいです. これは、従来のハードウェア産業から考えると、明らかに異常な事態です.

こうしたハードウェアスタートアップの隆盛は、趣味的なハードウェア愛好家を支援するエコシステムが育ってきたことから、実現しています. この生態系の盛り上がりを指して、「メイカームーブメント」と呼ばれているようです.

個人的には、生産性の低い大企業は新興企業にどんどんと脅かされて人材流出した方が社会的に望ましいと思うので、もっと趣味的なMakeが流行るといいと思います.

なお、メイカームーブメントを象徴するお祭りとして、Maker Faireと呼ばれるイベントが世界中で開催されています.

www.youtube.com

東京でも、毎年メイカーフェア東京が開催されており、2018年は8/4(土)〜8/5(日)の予定です. 私も遊びに行きたいと思います.

メイカームーブメントと深圳

香港と隣接する中国の都市である深圳市は、メイカームーブメントの中心地の1つとして語られることが多いです.

深圳は中国最初の経済特区で、大都市・香港の下請け工場が成熟して、大抵のハードウェアならゼロから作れるくらいの技術を蓄積するようになったそうです.

現在は大量のハードウェア工場、テンセントやファーウェイなどの企業本社、世界最大の電気街「華強北」などを擁しています.

特質すべきは、Seeedという会社が、雑多で複雑な深圳の工場群を、仮想的なWebサービスのように扱えるようにしている点です.

シリコンバレーを含む世界中のメイカーが、Seeedを通じて試作品や小ロットの製品量産を低コストで発注し、スピード感を持ってハードウェアスタートアップとして羽ばたいていきます.

世界のメイカームーブメントを支えるエコシステムの重要な一翼を、深圳が担っているわけです.

メイカームーブメントと政府

メイカームーブメントで興味深いのは、地域的なコミュニティはもちろん、政府によって強く支援されている例が多いことです. この本では、深圳、アメリカ、シンガポールが例に挙げられています.

特にオバマ政権の例が面白く、彼は2014年からなんとホワイトハウスでメイカーフェアを開催しています.

https://makezine.com/2015/05/06/a-practical-roadmap-mayors-maker-challenge-part-2-of-3/

2014年のWhite House Maker Faireでの大統領の挨拶は、以下のサイトから全文日本語で読むことができます.

makezine.jp

とりわけ印象的なのは、以下の一文です.

本日、みなさんをお招きしたのは、今日がD.I.Y.だからです。D.I.Y.は明日のMade in Americaです。みなさんのプロジェクトは、アメリカの製造業に起こりつつある革命の実例です。新しい雇用を生み、今後数十年続く産業を生み出す革命です。

「ハードウェアを作ることが、明日のアメリカを作る」という明確なメッセージを発して、大統領自らメイカームーブメントを支援していることがわかります. その背景には、ハードウェア製造業がその他の産業に比べて多くの雇用を生み出すという事実があります.

また、シンガポールの例では、メイカーへの支援がさらに社会制度や公教育に現れています.

例えば、シンガポールではオートメーションへの投資が盛んで、レストランが新しい自動化レジを入れると、70%までは政府の補助が出るそうです. ルールのトライ&エラーも積極的に行なっており、日本ではまだ実現できなそうな先進的な試みがされています.

  • 全ての車にERPというシステムが搭載され、混雑時に公道を走っていると自動で課金される

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  • レストランで給仕するドローンのテスト飛行が許可される

www.youtube.com

以前シンガポールに旅行に行ったとき、Uberを使って非常に便利だった記憶があります. ぜひ日本にも、大企業や既得権益の延命に注力するのではなく、未来の日本社会や世界にとっての一番いい選択が何かを議論して欲しいです.

やってみた

せっかくこの本を読んだので、メイカーズムーブメントの裾くらいは掴みたいと思いました.

クラウドファンディングの出資先を探してみた

日本のハードウェアメイカーを、クラウドファンディングで支援してみようと思いました.

ただ、Makuakeなどを見ると、海外のクラウドファンディングサイトで成功した製品を日本に輸入して販売するケースが多く、日本のハードウェアメイカーが直接出資を募っているプロジェクトはかなり少ない印象でした。

また、クラウドファンディングブームはすでに落ち着いているようで、例えば、1/8タチコマで有名なCerevoがやっているハードウェアクラウドファンディングサイト・Cerevo DASHは、2012年前後で時が止まっているようでした...

その中でも一番盛り上がっているのは、やはりCAMPFIREのテクノロジー・ガジェットカテゴリのようです. ちょうどいいプロジェクトがなかったので、インターステラテクノロジズのロケット事業に5,000円投資しました.

camp-fire.jp

そもそも日本は寄付文化がそこまで無いので、クラウドファンディング自体が文化的に合っていないのかもしれません.

ラズパイで電子工作してみた

実際に自分で電子工作をしてみることも試しました. よく言われる話ですが、ラズパイと秋月電子通商があれば、初歩的なことは簡単にできました.

参考にした本は、これです.

必要な電子部品が型番指定で書いてあり、それらを使って最低限やれることを実践で学べるので、すごく良い本でした.

そして、治安の悪いライトができました.

会社の宣伝をしたりしました.

今のところ、光の色で進捗がわかるタイマーを作るところまでできました.

WebIOPiというやつを使うとブラウザ経由でラズパイを操作できるらしいので、今後はそれを使ってWebエンジニアならではのプロダクトを自作したいと思っています.

まとめ

  • メイカー・ムーブメントが世界的に加速している
  • 日本のメイカーはどこにいるんだろう?
  • 電子工作楽しい!