「白と黒のとびら オートマトンと形式言語をめぐる冒険」を読んでオートマトン学習モチベがMAXになった話
こんにちは、 しがないラジオ パーソナリティのgamiです.
友人から借りて、オートマトンと形式言語をファンタジー調で解説した本を読みました.
内容は物語ですが、研究者である著者が、東京大学出版会というガチガチなところから出しているので、技術的な裏付けのある書籍です.
- 作者: 川添愛
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2013/04/18
- メディア: 単行本
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3行で感想
あらすじ
主人公は魔術師アルドゥインの弟子のガレットです.
ただし、師匠からはいっこうに魔法を教えてもらえず、毎日よくわからない言語の勉強をさせられます.
古代ルル語や古代クフ語という古代の言語で、文字は○と●の2文字しかありません.
しかし、各地で不思議な遺跡と出会い、それらを探索する中で、古代語を学ぶ意味に気付いていきます.
遺跡は白と黒のとびらのついた部屋の集まりから構成されていて、とびらを開ける順番を誤ると、二度と出てこられないものもあります.
ガレットは古代語の文法と遺跡の関係についての謎を紐解いていき...
オートマトンと形式言語
各古代語には、それぞれ固有の文法があります. 例えば、第三十三古代クフ語は、「偶数個の○と●の文字からなる回文」のみを、正しい文とみなします.
そして、各遺跡にも、どの状態で、どの行動をしたら、どの部屋に飛ばされるか、といったルールがあります.
古代語や遺跡などのよくわからないけどものから、こうした固有のルールを、読者もガレットと一緒に見つけ出していくような作りになっています.
巻末には、物語の解説がまとめられています.
物語の中の要素との対応としては、実は
を表していることがわかります.
また、オートマトンと形式言語の「現実世界」での発展に沿って、物語のストーリーが組まれています.
その対応関係も、解説を読んだときに後から知らされるので、「そうだったのか!」という感覚が味わえます.
オートマトンや形式言語を学ぶ意味
この本を読む前は、「オートマトンとかよく聞くけど、ライフゲームみたいなやつでしょ」くらいの知識でした(雑).
読んだ後は、かなりオートマトン学習モチベが上がりました.
こちらも解説に書いてある内容ですが、オートマトンと形式言語は、とってもとっても大事な基礎理論らしいです.
情報科学も数学も、漠然と「学び足りてないなあ」と思っているので、その基礎を知れるというのは良いなあ.
また、オートマトンと形式言語を深く学ぶことによって、以下のような問いに対して答えることができるとのこと.
- 「計算」とはそもそも何なのか?
- 計算機械にできることと、できないことの境目はどこにあるのか?
- 人間の脳を一種の「計算機械」と見なした場合、私たちの持つ言語能力をどのように説明することができるか?
個人的には、特に「2. 計算機械にできることと、できないことの境目はどこにあるのか?」という問いにはすごく興味があります.
この本の終盤のテーマも、「何でもできそうな計算機械でも、実はできないことがある」という点にあります. こうした「直感に反する事実を論証する」というところに、理論の強さがある気がします.
最近の機械学習/ディープラーニング熱の高まりを見ていると、「もうAIが全部決めてくれればいいのに」と思うことがあります.
しかし、実際には、その「全部」という領域の範囲は、理論上は「全部」ではないかもしれない?ということなんですかね.
こんな感じでもやもやしてくるので、この本はオートマトンと形式言語の入門書として、最適な本だと思いました.
「白と黒のとびら」というオートマトンと形式言語を物語にした本を読んだ. 面白かったが、オートマトンを知らないと「だからなんなんだ」感がすごいので、関連書籍を読むことを強いられる. 入門書として逆に優秀.https://t.co/hRjp2j90Vw
— j_ikegami (@jumpei_ikegami) 2018年1月1日